三万円の再会と、母の引き出し
片付けをしていたら、懐かしいカセットウォークマンが姿を現しました。 手に入れたのは、もうずいぶん前のこと。
確か三万円くらいしたでしょうか。
当時の私にとっては、背伸びをして手に入れた大きな買い物。
どこへ行くにも一緒だった「相棒」

とっくに手放したつもりでいたけれど、母がずっと大切に、引き出しの奥で取っておいてくれました。
今はもう文字も消えかかり、動くかどうかもわからない。
けれど、かつてホンダのエンジンと共に世界を驚かせた、あの頃の日本の熱量がその小さな体に宿っています。

ゴミにするには忍びない
今の姿のままメルカリへ送り出してみる


自分だけが持っている特別な一台だと思っていたけれど、画面の中には同じようなかつての相棒たちがズラリ。
ライバルの多さに少し圧倒されながらも、どこか

みんな、捨てられなかったんだな
心強いような、不思議な気持ちになりました。
出品の際、少し焦る一幕もありました。 他の方の説明文を参考にしたせいで、間違えて動作品として公開してしまったのです。
大変、これでは相棒との歴史に嘘をつくことになる 慌てて、正直な現状を書き直しました。
ボロボロなことも、動かないかもしれないことも、すべてが母と私が共に見守ってきた証。
今も画面の向こう側からは、途切れることなく視線が届いています。
誰かの思い出と、私の手元にあるこの一台が、時を超えて繋がっていくような感覚。
かつての相棒が、また誰かの手で息を吹き返すのか・・
それともこのまま思い出として幕を閉じるのか・・
その結末をゆったりと待ってみようと思います。
もし何でもかんでも取っておいて、家が倉庫のようになってしまっていたら、今回のウォークマンを見つけた時の「ハッ」とする感動は薄れていたかもしれません。
多くのものを手放してきた中でたまたま母が残してくれていたという偶然
それこそが、単なる中古品としての価値以上の、「奇跡的な再会」という付加価値を生んでいるのではないでしょうか。
今まで何気なく捨ててしまったものの中にも、今ならお宝と呼ばれたものがもっとあったのかもしれない。
けれど、こうして残っていてくれたこの一台は、多くの別れを経て私の元に留まった、選ばれし相棒なのだと思う。
過去への後悔よりも、残してくれた母への感謝を込めて。

さて、次はこの相棒を誰に託そうか

